ジョス・ファン・インマゼール Jos van Immerseel(フォルテピアノ)
《巨匠インマゼールの世界》
▶幻想曲 ハ短調 K475
Fantasie in c K475
▶グルックの《メッカの巡礼》の主題による変奏曲 K455
Zehn Variationen in G über die Ariette “Unser dummer Pöbel meint”
aus dem Singspiel “Die Pilgrime von Mekka”(C.W.Gluck) K455
▶アダージョ ロ短調 K540
Adagio in h K540
▶ピアノ・ソナタ ハ短調 K457
Sonate in c K457
▶幻想曲 ハ短調 K396
Fantasie in c K396
▶ロンド イ短調 K511
Rondo in a K511
▶メヌエット ニ長調 K355
Menuett in D K355
▶ピアノ・ソナタ イ長調 K331「トルコ行進曲付き」
Sonate in A K331
私は10歳の時、17、18、19世紀のオルガンに出会いました。それは、豊かな響きの宝庫でした。オルガンが1台1台全て異なる「固有の個性」を持っていることに驚き、そしてまもなく、ベルギーで数多くのオルガンを知ることに努めました。バカンスのときは国外へも。1960年代は一つのタイプのピアノしか弾かれていない時代で、文化的で音楽的な豊かさを見出すことができなかったのです。これは、私にとって苦い幻滅でした。例えば、モーツァルトを第二次世界大戦後に製作されたピアノで演奏されると、私は違和感を覚えました。モーツァルトは現代のピアノを知らなかったし、現代のピアノの為に作曲したのではなかったからです。
みなさんなら、私の驚きを理解できることでしょう。
やがて20歳の時、モーツァルト時代のピアノを弾く機会を得ました。 突然、豊かなあのオルガンの世界との繋がりが築かれ、同じような文化がピアノの歴史にも存在するのではないかと思いました。その時モーツァルトの音楽が、輝くような高音、透明な低音、そして尋常ではない大きな強弱の幅を持って、特別に鳴り響いたのです。
モーツァルトは、やっぱり素晴らしい作曲家でした。もし、モーツァルトがインスピレーションを得て、モーツァルトに挑ませた当時の楽器でモーツァルトの作品を聴いたら、最高のものを引き出せるでしょう。
ある日、私はモーツァルトのピアノ協奏曲を現代のピアノで、アムステルダムのコンセルトヘボウで弾きました。その時、私は誤ったモーツァルト像を紹介し、観客を騙してしまった、と思ったのです。それから、私の人生は完全に変わりました。至る所で、歴史的な楽器を探し、好奇心から現代の楽器製作者によるレプリカを研究し始めました。
1978年は、私にとって重要な年でした。モーツァルトのCDを1788年のヨハン・アンドレアス・シュタインをモデルとする素晴らしいレプリカで録音できたのです(当時はまだLPでしたが)。保存状態の良い歴史的なピアノで演奏することもできますが、モーツァルトの音楽は常に新しい楽器で弾いていたのです。その頃は当時のピアノは知られていなかった。だから今日、新しく製作されたシュタインや、ウィーンの当時の楽器で演奏することは、より歴史的に意義深いことなのかもしれません。
1991年にモーツァルトのピアノ協奏曲全曲を、私が結成したオーケストラ「アニマ・エテルナ」と東京のカザルスホールと京都で演奏しました。作曲された当時の楽器によって弾かれたモーツァルトに日本の観客は魅了された、と私は確信しました。その時、クリストファー・クラークによる1988年に製作されたアントン・ヴァルターのモデルで演奏しました。
私たちは今日、なぜモーツアルトが手紙の中で当時のピアノについて熱狂的に書いていたのかを、本当に理解できるでしょう。
Jos van Immerseel
(ジョス・ファン・インマゼール)
ベルギーのチェンバロ、フォルテピアノ、オルガン奏者、指揮者。
アントワープ王立音楽院にてピアノ、オルガン、チェンバロ、声楽、指揮を学び、ケネス・ギルバート、フロール・ペーテルス、ダニエル・シュテルヌフェルトらに師事。1973年に開催された、第1回パリ国際チェンバロコンクールで優勝。音楽に対する幅広い関心は、独学での楽器学、修辞学、歴史的なフォルテピアノの研究にまで導いた。
ジョス ・ファン・ インマゼールの作品は彼の人生であり、その人生は音楽である。それらは 150以上の録音で聴くことが出来、全て歴史的な楽器で録音されている(レーベルは、アクサン、チャンネル・クラシックス、ソニー、ジグザグ、アルファなどより発売)。
1987年に自身のオーケストラ「アニマ ・エテルナ」を創設し、常に作曲家と同時代の歴史的な楽器を使用して演奏を行っている。モーツァルトのピアノ協奏曲全曲(コンサートはヨーロッパと日本でも行なわれた)、ベートーヴェンとシューベルトの交響曲全曲(コンサートツアーは、オーストラリア、メキシコ、アメリカで行なわれた)の録音で世界的な名声を確立し、モンテヴェルディからガーシュウィンにまでレパートリーを広げている。各プロジェクト毎に、全ヨーロッパからベストな演奏家が集められ、現在ブルージュのコンセルトヘボウを演奏拠点としている。
客員指揮者としては、ブダペスト祝祭オーケストラ、ベルリン古楽アカデミー、ザルツブルク・モーツァルテウム・オーケストラ、ウィーン・アカデミー・オーケストラ、トロントのターフェルムジーク、シュトゥットガルト放送交響楽団、ボンのベートーヴェン・オーケストラに招かれ、指揮をしている。
インマゼールは今まで、アントワープ王立音楽院、アムステルダム音楽院、パリ国立高等音楽院の教授を勤め、スイスのスコラ・カントルム・バーゼル、アメリカのインディアナ大学、国立音楽大学で客員教授として講義を行なった。ヨーロッパ、アメリカ、日本各地のマスタークラスでも教鞭を執っている。
長年に渡り歴史的な鍵盤楽器の収集を行い、その楽器をヨーロッパ各地のコンサート会場に運んで、演奏会を行っている。
現在の室内楽のパートナーは、トーマス・バウエル(バリトン)、イエーリ・スー(ソプラノ)、ジュリアン・プレガルディエン(テノール)、伊藤綾子(フォルテピアノ)である。
東京文化会館チケットサービス 03-5685-0650
日本モーツァルト協会 03-5467-0626
※学生券は日本モーツァルト協会のみ取り扱い
クレメンティ作曲:ピアノ・ソナタ 嬰ヘ短調 Op.25-5より第1楽章
※ 出演者・プログラムは変更することがございます。予めご了承ください。
※ 10歳以下の方の入場はご遠慮下さい。
※ 会場での無断撮影、録音は固くお断りします。