イザベル・ファウストとアレクサンドル・メルニコフによる注目のモーツァルト・シリーズ第1弾。どの作品も、キャラクターの描き分けが実に鮮やか。モーツァルトのソナタ・シリーズは、東京・王子ホールでも2017年10月に公演があり、その細やかなアンサンブルで絶賛されました。今回は、1778年11月にパリで出版されたK306と304、そして《ドン・ジョヴァンニ》作曲中に書かれたモーツァルトの最後のヴァイオリン・ソナタK526(1787年完成)という組み合わせです。ニ長調K306は、このソナタが「ピアノとヴァイオリンのための」と正式には記されていることに納得の、ピアノが主となる部分が多い作品ですが、ファウストもメルニコフも絶妙なバランスを保ちながら対等に演奏しており、作品のもつエネルギーが存分に引き出されています。ホ短調K304の有名な冒頭の、ファウストのすすり泣くような音色、第2楽章のメルニコフのソロなどは思わず涙のせつない美しさです。イ長調のK526は、モーツァルトの最後のヴァイオリン・ソナタ。輝かしい推進力に富む両端楽章にはさまれた、短調のかげりの濃い緩徐楽章は、少年時代に親しかった友人アーベルの訃報に心を動かされて作曲されたと考えられています。バッハを思わせるような厳格な書法も用いられている充実作です。ファウストのヴァイオリンの音色の変幻自在な美しさと精確なテクニックはもちろんのこと、メルニコフの奏でるフォルテピアノのおそろしいまでの表情豊かさ、そして二人の演奏のすべてを見事にとらえた優秀録音にも圧倒されるモーツァルトです!
【曲目】
1.ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 K306
2.ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K304
3.ヴァイオリン・ソナタ イ長調 K526
【演奏】
イザベル・ファウスト
(ヴァイオリン:1704年製ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」)
アレクサンドル・メルニコフ
(フォルテピアノ:クリストフ・ケルン、2014年製/1795年製
アントン・ヴァルター(ウィーン)・モデル、メルニコフ・コレクション)
【録音】
2017年8月
【レーベル】
Harmonia Mundi
品番:HMM902360
(以上キングインターナショナルより)