2016/4/11(月) 14:00~16:30
会場:アトリエ・ムジカ(定員100名)代々木駅より徒歩3分
テーマ「モーツァルト演奏におけるオーセンティシティとは」
会費:会員1,000円/一般1,500円
お申し込み:協会事務局に予め電話・FAX・Eメールのいずれかの方法でお申込みください。
※日本モーツァルト愛好会、モーツァルティアン・フェラインの会員は会員料金となります。
国内外での受賞を経て1987年ヨーロッパと日本で本格的にデビュー。リサイタルも全国各地で開催しており、中でも「ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏会」とレコーディングは、作品への真摯な取り組みと音楽性が高く評価されベートーヴェン弾き、仲道郁代」という評価を確固たるものとしている。
「モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集」で、「レコード芸術」誌で特選盤に選ばれ、「現代のピアノによるモーツァルトの決定盤」と評された。
最新CDは「ショパン:ワルツ」(プレイエル、スタインウェイ使用2枚組)で、「レコード芸術」誌で特選盤に選ばれ、「2つのピアノで時を越えるショパンのワルツ」と評された。
2016年はデビュー30周年を迎え、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団、ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団との共演が予定されている。
http://www.ikuyo-nakamichi.com
今回は、昨夏軽井沢の大賀ホールで催された「ピアノ・ソナタ全曲演奏会(当協会主催)」にご出演いただいた仲道郁代氏をお招きし、「モーツァルト演奏におけるオーセンティシティとは」と題してご講演頂きました。
本日はピアニストの立場からモーツァルトを語らせて頂くことにしたい、と断わられた上で、ご自身がモーツァルトのピアノ演奏を始めた頃の話題に触れられました。当初自分は、協奏曲は管弦楽器との掛け合いで色があり、立体的であたかもオペラやシンフォニーのある部分であったりして面白く入り易かったが、ソナタはモノトーンでベートーヴェンの様な構築感に乏しく、現代ピアノでソロを弾いている時にソナタを浮かび上がらせるのに大変大きなハードルを感じ詰まらなかったそうです。しかし、研鑽を積むうちに、チェンバロ、クラビコード、タンゲンフリユーゲルしかなかった時代の1728年に「シュタイン」というこれまでのものに比較して格段に進歩した楽器が誕生し、これに遭遇したモーツァルトが俄然ソナタに制作意欲を湧かし、彼がどのような表現をするようになったのかを知ることが秘密のカギとなるのではないかと気付き、仲道氏もこの「シュタイン」を実際に弾いてみて、現代ピアノが音のダイナミズムを求めるあまり失った、表現の細やかさ、カラフルさ(モノトーンではなかった)、弾く者を喜びに導く魅力を感じ取ることが出来て、以来ソナタを弾くことが面白くなったそうです。
講演は、次の3 つの切り口から進められました。
Ⅰ.『旅』…モーツアルトは35 歳の生涯で10 年以上旅をしていたが、これがモーツアルトにもたらしたものは何なのか。
Ⅱ.『楽器』…これは最も大切な部分であって、モーツァルトが使用していた楽器は、ピアノ曲と言うには程遠くバラエティに富んだ幾種かの鍵盤楽器によって作曲されているということの認識。
Ⅲ.『楽譜の読み方』…明治以降⻄洋から日本に入って来たピアノ教則本や楽譜の読み方は、モーツァルトの時代とは大きく異なるものであること。今の概念のままで読むとモーツァルト時代とは異なった音楽になってしまうというエライ危険があり、これを正しく読み取るにはどうしたら良いのか。正統的なモーツァルト音楽は何処にあるのか、何なのか、について現代に生きる我々が時代を越えて探るためのポイントが表題の「オーセンティシティ」なのだそうであり、予定の2時間を大幅に超え、熱心な講演がなされました。